フクロウ王子たちが住む森には、たくさんの人がピクニックを楽しみにやってきます。
ほとんどの人が深呼吸をしながら、「空気がおいしいね」と言いますが、フクロウ王子はその言葉がふしぎでなりませんでした。
なぜなら、空気の味を感じたことがないからです。
ある日、王様フクロウに「人間は空気がおいしいっていうけれど、おいしい空気って、どういう味なの?」と聞きました。
王様フクロウは、「味というよりも、よごれていない空気のことじゃろうな」と答えたあと、「ついておいで」と言いながら、木からとび立ちました。
さいしょに止まったのは、トンネルの入口に近い木でした。たくさんの車が通りすぎていきます。
「トンネルの中や近くには、見えないけれど、あまり体によくないはいきガスがたまっているから、近づいてはいかんぞ」
王様フクロウがそう言ったとき、音もなく走る車がやってきました。
「あれは電気で走る車じゃ。走っているときにはいきガスをまったく出さないから、空気をよごさないんじゃ。人間は空気をきれいにすることも考えているんじゃぞ」
つぎに遠くの工場地帯が見わたせる木に止まりました。
「むかし、工場のまわりで、せきがとまらなくなり、いきをするのもくるしい病気がはやったんじゃ。工場のえんとつから、目には見えないのに、体にわるいものがたくさん出てきて、空気をよごしながら広がったんじゃよ」
王様フクロウの話を聞いていたフクロウ王子は、だんだんおそろしくなってきました。
見えないのに体にわるい空気が広がったら、空を飛ぶことも、森に住むことできなくなってしまうからです。
「い、いまも広がっているのかな」と、フクロウ王子はふるえるような声でつぶやきました。
王様フクロウは、「いまはきれいになったから心配しなくてもだいじょうぶじゃぞ。じゃが、人間はべんりな生活のために、空気をよごすようなものをつくりだしてしまうことがあるんじゃ。そういうものが空気にまざれば、空にはかべがないから、広がってしまうんじゃ」と、教えてくれました。
森に帰ってきたフクロウ王子は、「おいしい空気は、きれいな空気」と歌いながら、しんこきゅうをくりかえしました。
そして、森のなかまや、人間の友だちとも話し合い、空気をよごさないくらし方を考えてみようと思ったのでした。