長い冬がおわり、フクロウ王子たちがすむ森に花が咲きはじめたある日、まちの小学校にかよう子どもたちが、遠足でやってきました。
ちょうどお昼のじかんです。おべんとうを広げた子どもたちは、手を合わせると大きな声で「いただきます」と言い、食べ終わると「ごちそうさま」といいました。
フクロウ王子は、王様フクロウに「あのお祈りはなに?」と聞きました。
王様フクロウは「お祈りではないぞ。食事の前とあとの大切なあいさつじゃよ。そうじゃ、ちょうど港に魚船が入っておる。ついてきてごらん」といいながら、空にとびだしました。
港では、あみですくわれたたくさんの魚が、魚船からトラックにうつされていました。中にはまだ生きている魚もいます。
「さっきまで海をおよいでいた魚じゃよ。ワシらもそうじゃが、生きものは、ほかのいのちを食べることで生きていけるんじゃ。だから、食べる前にいのちをささげてくれた生きものや、いのちを育ててくれた地球にかんしゃして “いただきます”と言い、残さずに食べるようにするんじゃよ」と、王様フクロウはやさしい声で教えてくれました。
フクロウ王子は、お母さんから聞いた話を思い出しました。
赤ちゃんのころ、いつもフクロウ王子がおなかをすかせていたから、食べものをとってくるのがたいへんだったという話です。
「ぼくの体は食べものでできているから、食べものを用意してくれた人に感謝することも大切だね」と、フクロウ王子が言うと、王様フクロウは、目を細めながら、こういいました。
「大切なことに気がついたようじゃな。だから、食べたあとには、“ごちそうさま”と言うんじゃよ。いのちがけで食べものをとってきてくれた人や、あせをながしながらやさいなどをつくってくれた人、体にいいものをおいしく料理してくれた人に感謝する言葉じゃよ」
その日から、フクロウ王子は食事のときに両方の羽をむねの前で組み、大きな声で「いただきます」、「ごちそうさま」というようになりました。
森の動物たちもまねをするようになり、「いただきます」、「ごちそうさま」という声が、森の中からたくさん聞こえてくるようになったのです。
おわり