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対談 Green Dialogue vol.6

環境保全、環境教育など環境社会貢献に取り組むさまざまなスペシャリストに、弊社代表の三枝 亮がお話を伺う「Green Dialogue」。第6回のゲストは世田谷ものづくり学校の一室にオフィスをかまえる「みんな電力」の大石代表です。

「みんな電力」さんは、今年4月1日の電力自由化にさきがけて、2月から東京世田谷区でグリーン電力※の地産地消事業を始めました。グリーン電力化100%を目標に掲げ、だれもが太陽光やバイオマス電力の生産者を選んで買える仕組み「enection」で、個人宅や商店などへの電力供給に取り組まれています。

※グリーン電力:自然の活動によって半永久的に得られ、継続して使用できる風力、太陽光、バイオマス(生物資源)などの再生可能エネルギー(=自然エネルギー)により発電された電力のこと。石油や石炭などの化石燃料は有限でいずれ枯渇します。また、これらは発電するときにCO2(二酸化炭素)を発生しますが、再生可能エネルギー(=自然エネルギー)による発電は発生しません。グリーン電力は、地球環境への負荷が少なく、地球温暖化対策の一つとしても重要視されています。

今回のインタビューは前回に引き続き、新緑溢れる長野県栄村小滝集落で行いました。村へ向かう車中や、お米の苗作り「すじまき」体験をご一緒しながら、将来を担う子どもたちのために、我々はエネルギーとどのように向き合って行ったらいいのか、お話を伺いました。


みんな電力株式会社 代表取締役社長 大石英司さん
グリーン電力化100%を目標に掲げる電力会社

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― はじめに、私が勝手に思い描いている夢のようなものがあります。それは、子どもたちの里山キャンプでお世話になっている長野県栄村を、エネルギー自給率100%の村に出来ないかなということです。

その昔は秘境と言われたほど山奥の水資源の豊かな場所ですから水力発電とか、手付かずになっている森林も多いのでバイオマス発電の可能性があるのかなと。広大な山岳地帯に小さな集落が30くらい散らばっているのですが、その限界集落と言われる村の集落が、それぞれマイクロ発電しているというのも素敵だなと思っているのです。
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この小滝のように13世帯しかない小さな集落が、食べ物もエネルギーも100%自給自足している。全国の集落の魅力的なモデルケースになれたらと。小滝と東京と比べてどっちが強いかと言われれば、圧倒的に小滝ですよね。

なるほど。集落13世帯くらいならすごく小さな水力発電でいけるかもしれませんね。小さな単位で自立して、それを俯瞰して村・町単位にエネルギー自給を広げるというのが理想ですよね。集落と自治体は色々な補完の仕方があると思います。例えば町村でも間伐材を利用したバイオマス発電所を作るとします。集落から間伐材を持ち込み、それがお金になる。その間伐材で電力を作り、町村の電力をまかなう。余剰電力を外へ販売すれば収益にもつながる。なにより山村共通の林業マネタイズの問題解決、林業の活性化のきっかけにもなると思います。


日本の自然エネルギー環境の未来像とは

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― 栄村では数年前に、環境問題に熱心な担当者の方の尽力で、地元の間伐材を利用したチップボイラーで村営宿の温泉を運営するシステムを実現しました。
点ではそのような動きがありますが、なかなか大きな動きになっていないのが実情だそうです。マイクロ水力など、小さい事例を各里山単位でつくってそれぞれがエネルギー自給率100%をクリアし、その動きが村に広がって、余剰分は売電収入にするという。そんな風になったら素敵だなと思うのですが・・・。

使いたい人が増えると、一気に日本の自然エネルギーの環境は変わっていきます。東京などの都会ではエネルギーを自分で作ることは出来ないわけです。もし電気が遮断されたら、全ての営みが止まってしまうから、外から買うしかない。であれば、発電する地域を応援することが消費地側の役割になっていきます。

4「地域と繋がった電気を使いたい・買いたい」と意思表明する人が増えるほど、地域がエネルギーの生産をしやすくなります。小さな地元単位でエネルギーを自給自足し溢れた分を都会が恩恵にあずかる、それを買うという都会からのバックアップが必要です。電力を選ぶ事が、地域に直接貢献することになるのです。
例えば、世田谷区は地方の電力を高くても使うと宣言し、群馬県川場村からグリーン電気を買う側として手をあげています。世田谷で生まれた落ち葉や枯れ枝などを収拾して川場村に運び、それをバイオマス発電にするようです。そのようにして自治体間同士のつながりが生まれています。

― 小さな村と都会の消費地域を結びつけるシナリオがあるといいですよね。お米で縁をいただいた栄村や小滝集落とサヱグサとでもそんなシナリオが出来ないかなと夢を描いているところです。もちろんそれだけでは、環境全体を考えるにはあまりに小さい世界なので、もう少し大きい規模だといいですけどね。

例えば銀座だったら、銀座の水源として多摩川水流が数%残っています。東京の一番左にある檜原村がそうです。そこの水質キープのためには森林保全が大切なのでそのために間伐が必要です。その間伐材でバイオマス発電をして、その電気を銀座が買う。そうやって地方の小さな村が環境レベルで都会とつながる。それが実現したらとても綺麗な流れ・シナリオですよね。

そうですね。そのこと自体はそんなにハードルは高くないと思いますよ。実例として、先ほどの世田谷区と群馬県川場村の取り組みも参考になると思います。それまでは処理に困っていた世田谷区の落ち葉や剪定した枝が川場村のバイオマス発電所で燃やされ、その灰で育てられた野菜がまた世田谷で売られています。トラックの往復がそんな形になっていくのです。

しかし、それにはやはり、欲しいという声と、やりたいという信念を持った人物が地方側にいることが重要です。はじめは自治体単位ではなく、あくまで住人起点というのがポイントですが。


「誰でも、手のひらでも電気はできる、焦らなくても大丈夫」

― なるほど。やはりそのような動きが世帯数の少ない栄村のような小さな場所から起きれば、他でもやりやすいですね。積み上げやすいというか、他に繋がりやすいと思いますね。いつか実現したいです。

ところで、大石さまはクリーン電力100%を目標に掲げる電力会社「みんな電力」を起こされました。異業種から独立されての起業とお聴きしていますが、この取り組みを始められたきっかけはなんですか?

私は、凸版印刷で新規事業担当、国産検索エンジンや電子出版などの開発事業に携わってきました。文章・ゲームをすぐに発表できるシステムがあったらいいな。と、一人一人の個性をすぐに発表し、ビジネスができる自立できる場つくりをテーマにした仕事をしてきました。それが例えば電子出版です。でもやはりそれも一部の才能ある人だけが成功する場所でした。もっと裾野を広げて誰もが出来ることは何かないか、そういった事をずっと探していました。

そんな2008年頃のこと、地下鉄で携帯ソーラー充電器をぶらさげている女性を見かけました。携帯の電池が切れかけていたのでその電気をその人から買いたいなと思い、「電気はだれもが必要で、誰もがつくれる。それを自由に売買できる仕組みがあったら」と思いついたのです。それが「みんな電力」の始まりです。
2011年に独立し、まずはじめに、誰もが発電できるポータブルのソーラーパネルで「手のひら発電機」をつくりました。スマホと連動して電力生産量も確認出来るものでした。

そんな中で3.11が起き、その直後の電気への関心が高まった中で、手のひらで発電が出来るという発想に興味や共感を持ってくださる人が現れて、世田谷区などからもお声をかけていただくようになり色々なご縁が出来ました。

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― やはり、震災あとのエネルギーを見直そうという流れが、今の世の中の反応に繋がっていますか?

そうですね。3.11の時、街が停電になって懐中電灯の電池さえ手に入らなくなったことがありました。そして我々は供給されてくる電気にいかに無意識で依存していたかに気づきました。計画停電の時の恐怖もありました。そんな時、自分たちで電気を生み出せることがどれだけ強いことなのかに皆さんが気付いたのだと思います。

― みんな電力さんは、「手のひら発電機」というモノを通して市場の意識改革に大きく貢献されたのですね。

「誰でも、手のひらでも電気はできるのだよ、焦らなくても大丈夫」という私たちのメッセージが届いたというか、生活する電気はその日1日分ずつなら自分で作ることが出来るということが皆さんだんだんとわかってきたかもしれないですね。


日本でも広がり始めたグリーン電力志向

― サヱグサでは、2012年から「グリーンプロジェクト」と称して、こどもために豊かな環境を残したいということで、出来ることから少しずつ活動を始めています。その一つに昨年春までの約3年間、グリーン電力証書を通じて様々な自然エネルギーを店舗の電源として使ってきました(期間限定)。

「みんな電力」さんはFIT電気を含めた再生可能エネルギー(=自然エネルギー)供給率が70%で日本でもトップクラスと伺っています。「みんな電力」さんがリーディングカンパニーとなって、グリーン電力を広げようというムーブメントになっているようですね。 

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今回の電力自由化における約300社の新規参入電力会社の中で、95%くらいは価格重視と言われており、再生可能エネルギーやFIT電気など電源にこだわっている電気を供給する会社はまだまだ少数です。

しかし、確かに今、ムーブメントが起きています。4月になり、電力切り替えをスタートしたところ、グリーン電力に対しては、予想をはるかに超えた申し込みがありました。ある会社では抽選の状態になったりしています。相当数のご要望があるのです。

電源にこだわって買う方が一般消費者の中にどれだけいらっしゃるのか、これは4月になってみなければわからない事でした。企業がCSRの取り組みやイメージアップの素材として求める事があるだろうとは予想されていましたが、一般の方でそれを求める方がそういるだろうかと懐疑的に言われてきたのですが、それを覆す結果になっています。

日頃から口に入れるものに意識の高い例えばオーガニック志向の方などは、電源への意識も高くグリーン電力を使いたいという方が多いようなのです。

― 今まで、電気というものは自然に供給されてくるものと、多分日本人はみんな思っていたのだと思います。でも、今回の自由化で初めて、電力にも内訳、電源の違いがあるという事とかが、初めて一般の市場で理解されつつあるということなのですね。

そうだと思いますね。ドイツやイギリスなど海外の電力自由化と国内の自由化をよく比較して論ぜられる事が多いのですが、日本は3.11を経験したあとに自由化されたという、他の自由化先進国と大きく違う背景があります。それが、予想を超えた数の一般の方が再生可能エネルギーを求めることにつながっている。この4月の自由化で見えてきた事です。

先ほども申し上げましたが、より多くの消費者が再生可能エネルギーを選択していくようになると、日本全体のグリーン電力化がさらに進みます。
毎月の電気代を、どこを応援するお金にするのか。この一万円が、石炭や石油など持続可能でない電力開発のためお金なのか、それとも地球に優しい再生可能エネルギーを増やすことにつながるお金なのか、それを皆さんが電気代を払う時に意識するようになると、自然に再生可能エネルギーを選ぶ人が増えていくと思います。その気づきまでが、時間のかかることではありますが。

― 電気も選ぶ時代が来て、環境を思うのであれば、安かろうではなく、どういう出処の電気なのか意識することが大切なのですね。
それが日本の自然エネルギー比率が上がることにつながると。サヱグサも会社として、できる限り取り込んでいきたいと思っています。

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子どもたちの未来のために、環境教育を通して伝えたいこと

― 大石さんは、これからの日本のエネルギーについて、子どもの未来や環境教育の視点からはどのようなお考えをお持ちですか?

先日は世田谷ものづくり学校で、ソーラーカーをつくろうというこども向けのワークショップを行いました。「車って太陽光で動くんだ!」と、そういう体験をこどもの頃からしていると、電気に対する恐怖心がなくなりますし、電気は受け入れるだけのものではなく自ら作れるものだ、と意識が変わります。おもちゃや遊びを通じて電気を作るということを体験した子どもたちが大きくなった未来は、日本の電力事情が随分と違った景色になっているはずです。

― 大変同感です。サヱグサもお子さんの為のイベントを度々開催していますが、特にグリーンのワークショプに力を入れています。ものを作る楽しみを提供しつつ、日本の将来を担う子どもたちが幼児期にそういう体験をする事によって、自ら環境の大切さに気づいてくれたら、という思いで行っています。大石さんのやっていらっしゃる活動と非常に共通していますね。いつか一緒にイベントを開催できたら素敵ですね。

是非お願いします。こども達はソーラーカーが動いた瞬間すごく感動します。目をキラキラさせて。電池もコンセントもいらない、太陽の光で動くんだということを楽しみながら学びます。私たちがこどもの頃にはそんな事は学べなかった。おもちゃは電池がなければ動かないと思っていましたからね。小さいときに学べるというのは非常に重要ですね。

― その通りだと思います。これからの子供たちが出て行く世の中は大変だと思います。資本主義社会とはいえ、これからは稼げばいいというのではない、環境を壊す経済活動はしてはいけないのだと世の中が気づきました。サヱグサは、環境を大切に守りながらも経済を発展させなければならない、そういう大変な世の中を背負っていくのに必要な精神性を育てるお手伝いをしたいと思っています。色彩感覚や味覚などは、幼児体験が非常に重要と言われています。私たちは子供服を通じて子どもの感性を育て、豊かな大人になるためのお手伝いをしてきました。その延長線上で同じように、小さいときに環境の大切さを感じられる場を提供することをサヱグサのCSR活動「グリーンプロジェクト」の主体としているつもりです。

先ほどの村のエネルギー自給の話で、サヱグサが開催している里山体験の拠点であるこの栄村が、小さいながらも食・エネルギー自給自足が出来る里山になって欲しいと言いましたが、そう思う理由の一つは、里山は大自然や人々にふれ合いながら暮らしの知恵や自給自足の生活を学ぶ事ができる、都会の子供たちにとっての大変素晴らしいテーマパークだと思うからです。食べ物やエネルギー、そして自然と人がどのようにつながっているのかを体験できる場を日本中の子どもたちに提供したい。そういう場所が増えていったらいいなと思っています。7

変わり始めた「強さ」の概念

そうですね。何かに依存しきっていると、そこと断絶した途端生きていけないと絶望してしまいますね。そうではなく、食もエネルギーも自分で生み出せることがわかっていれば、一人で生きていけるという安心感になります。その安心感があればメンタルの強い人間になれると思います。

私は最近、「強さの概念」が変わってきていると感じています。これまでの強さは、例えば情報力を駆使した経済力でした。これから求められるのは、人間本来の原点にかえり、食・エネルギーも自分でつくれる事。自分で生きていけるという「強さ」が必要だと思います。

― なるほど「強さの概念」ですか。私はこれまで「豊かさの概念」が変わってきたと言ってきましたが、いい表現ですね。何万人が住んでいる大都市より、小さくても全てを作り出すことの出来る里山の方が「すごい」「強い」と言われるようになって行くのかもしれませんね。

はい。遠くない将来そうなりそうな感覚がありますね。そのためには、親の世代がその大切さがわかるようになる必要があると思います。親の役割は重要です。

― そうですね。子供たちのために、サヱグサもお店や活動を通して親御さんたちにもそのメッセージが届くようにがんばって行きたいと思いますし、そして再生可能エネルギー100%化を、微力ながらも積極的に応援していきたいと思います。

よろしくお願いします。お互いにがんばりましょう。最後に、私はいつもこれをお会いした方にお伝えするようにしているのですが、「さしたコンセントの向こう側が想像できますか?」と。これからは是非、電気を使うときに、コンセントをさすたびに自分がどこにつながっているか少し想像してみて欲しいのです。石油など資源エネルギーをめぐる紛争地につながっているかもしれないし、原子力発電の事故につながっているかもしれない。一方では緑溢れる小さな里山・小滝の人たちの笑顔かもしれない、そうすると未来のために、どんな電力を使いたいかが自ずとわかってくると思います。 

― とてもわかりやすいですね。それは喚起しますね。私も想像力を働かせてみます。

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対談御礼と後記

今回は、再生可能エネルギー供給のリーディングカンパニーである「みんな電力」の大石社長にたいへん貴重なお話をお伺いすることができました。ありがとうございました。

電力自由化という好機に、どれだけの消費者が日本の将来を考え電気を選択するのか?それ次第で日本の電気エネルギーの絵が大きく変わりそうです。

いまサヱグサでは再生可能エネルギー比率の高い電力の利用を検討しています。この取組みを通じて子どもたちに「コンセントの向こう側を想像する」ということの大切さを伝えていければと思います。

2016.05.31