対談 Green Dialogue vol.5

Green Dialogueは、環境保全や環境教育などに取り組む、さまざまなスペシャリストに三枝亮(ギンザのサヱグサ代表)がお話を伺うコーナーです。

今回は、2014年7月と2015年3月末にギンザのサヱグサが自然体験キャンプを共同開催した、NPO法人信州アウトドアプロジェクト(以下SOUP)の代表理事・島崎晋亮さんにお話を伺いました。お会いしたのは長野県栄村、小滝集落にある築200年の古民家「となりの家」。2011年の長野県北部地震後に改修をし、復興のシンボルとして来村者との交流拠点へと生まれ変わろうとしている場所です。


NPO法人信州アウトドアプロジェクト 代表理事 島崎晋亮さん
自然の中での挑戦が子どもの心を成長させる

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野外教育で被災した栄村の復興を

― 島崎さんは、日本最高積雪記録を持つ長野県栄村という人口約2000人の村を拠点に、自然体験活動などの取り組みをされていますが、現在の活動を始めたのはどのようなきっかけからですか。

大学時代、信州大学の教育学部で「野外教育」という学科を専攻していました。

子どもたちを集めてキャンプをしたり、1週間ほどかけて山を登ったり、スキューバダイビングをしたり。はたからは遊んでいるようにしか見えなかったかもしれませんが(笑)、野外の活動を通して、どのような教育ができるのかを学ぶ学科だったのです。

ある実習の中で、子どもたちとキャンプをした時のことです。自分が担当したグループに、怖がってなかなか野外のアクティビティができない子がいました。それが、1週間経つと、自分からチャレンジするようになり、精神面での大きな成長が見られたのです。

その実体験がきっかけで、子どもに短期間で変化をもたらしてくれる野外教育というものを改めて追求したくなり、大学院を経て、同じゼミの仲間と2007年に信州アウトドアプロジェクトを立ち上げました。

― どの辺りを拠点に活動を始めたのですか。

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当初は、長野市に拠点を置き、野外活動の指導現場であれば県内はもちろんのこと、北は北海道、南は沖縄まで、こだわりなく足を運んでいました。

ですが、2010年に、私たちにしかできない事を極めるためには、もう少し地域に根ざした活動に力を注ぎたいと考えるようになり、活動拠点を探していたのです。

そんな時にあの震災が起きました。私の住んでいる栄村も、翌日の3月12日に震度6強の揺れがあり、大きな被害を受けたのはご存知の通りです。

そこで、震災からの復興に、我々の活動が活かせるのではないかと考えて、2012年4月に栄村に活動拠点を移しました。


非日常の環境が子どもの成長を促す

― 2014年の夏に、栄村でのサマーキャンプ「Green Magic」を共同開催させていただきました。小学1年生〜3年生12人が参加しましたが、その時の子どもたちの様子はいかがでしたか。

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帰りの日のことです。みんなでクワガタ捕りをしたのですが、子どもたちの間で、「捕ったクワガタは持ち帰るのか」どうかという話になったのです。始めは、全員が持ち帰りたいと言っていました。すると、子どもたちの間から、「どうすればクワガタを無事に持って帰れるのか」、「自宅で飼えるのか」、「東京に連れていくのは、かわいそうなのではないか」と、さまざまな意見が出てきたのです。

結局、話し合いの結果、クワガタを自宅で飼っていて、虫カゴも持参していた子だけがクワガタを持ち帰るということになりました。それを見て「自分も持ち帰りたい」と言う子は一人もいませんでした。

私たち大人は、子どもたちの話し合いをただ見守っていただけです。問題提起と考える材料、そして話し合いができる環境があれば、幼い子どもでも自分たちで相談しあって結論を導き出せるのです。

― そこが野外教育で重要なところですね。そのように子どもたちが話し合って答えを出せるようになる年代はいつ頃からでしょうか。

一般的には、小学3、4年生頃が、自分と他者を区別して考え始める時期だと言われています。周りから自分がどう見られているかということや、他者がしたいことにも意識を向けられるようになります。自分と他者の意見を照らし合わせて一つの答えを導き出せるタイミングがその頃かもしれませんね。

小学校低学年の年代でも、話し合う環境や周りの大人の介入次第で、大人もビックリするような話し合いができると思いますよ。

― 集団での野外活動は、そのように対話の中で問題解決をしていく機会が発生しやすい環境であるかもしれませんね。さらに、さまざまな挑戦を経て、子どもたちの気持ちや物事に対する姿勢が数日間で大きく変わりますね。

g5_4そうですね。その効果というものは、なかなか数値化しづらいものですし、何をすればどう変わってくれる、といった法則はありません。だからこそ、どこで何が変わるきっかけになるか分からないような、「非日常の環境に身を置いてもらうことが大事なのです。

そういう意味もあって、キャンプの時には漫画やゲームは置いてきてもらうようにしているのですよ。

― 親元を離れて、数日間子どもだけで寝泊まりすることも、非日常のスイッチが入りやすいでしょうね

その通りです。また、親子で参加する場合でも、自宅に帰ってから親御さんが子どもにどう接するかによって、非日常で体験したことを日常生活に活かしていくこともできます。


キャンプを通じて文化と人の交流を生む

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― SOUPのキャンプは、栄村の大自然の中で非日常を体験できるだけでなく、村の「とうちゃん、かぁちゃん」と触れ合ったり、地元で採れたお米や野菜の「ごっつぉ(ご馳走)」で食文化を学べたりするのも魅力の一つですね。サマーキャンプでは、村のとうちゃんに葦の茎で水鉄砲を作る、昔ながらの遊びも教えていただきました。

今度のスノーキャンプも、とうちゃんかぁちゃん達は子どもたちが来ることを楽しみにしていますよ!

かぁちゃんが教える米粉を使った郷土料理づくりの時間もありますし、雪合戦やそりリレー、かまくら作りなど、雪がたくさん積もる栄村ならではのプログラムが盛りだくさんですから。

今回も、子どもたちが自主的にやりたいということをやって、「自分でできた」という自信を持って帰ってもらえるようにしたいです。

― 栄村の雪深さは都会では味わえませんから、ぜひ雪まみれにしてやってくださいね(笑)。ところで、里山の子どもたちは、普段から自然の中で遊び回っている印象がありますが、実際はそうではない地域もあると聞きます。実態はどうなのでしょうか。

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昔は、学校の登下校の時に友達と一緒に自然と戯れるのが当たり前でした。ところが、現在は学校の数が減って、遠い学校まで通うためにバスの送り迎えがあるので、登下校の道すがら遊ぶ機会がなくなってしまいました。

また、学校から帰ってきても、同じ年代の子どもが近所にいなければ、外で遊ぶことも少なくなってしまいます。そして、小学生でもそろばんやピアノなど、習い事が分刻みで入っている忙しさです。

つまり、身近に自然はあるのに、触れ合う機会が少なくなってきているのですね。

今後SOUPでは、未就学児を対象に、自然の中で遊びながら学んでもらう「森の幼稚園」を事業として力を入れていきたいと考えています。

― 日常的に自然に触れることが少ない都会の子どもたちに、野外活動の機会を提供したいと考えたのが、サヱグサが自然体験キャンプを開始したきっかけでした。

そんな都会の子どもたちと里山の子どもたちが、エリアを超えて友達になれると、大人になってからお互いに刺激が与え合えるかもしれませんね。今後、SOUPとサヱグサが、その接点づくりをしていける可能性はあるかもしれません。

今回は貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。


対談御礼と後記

お陰さまで、3月末に開催したサヱグサ初めてとなる冬のキャンプも、子どもたちの笑顔とともに無事に終了することができました。SOUPの方々と共にこれからも都心の子どもたちの自然や里山体験を続けていきたいと考えています。このキャンプが、地元の子どもたちとの交流の場にもなればより意義深いものになるかもしれません。そして「森の幼稚園」、すばらしいですね。心より応援しています!

島崎 晋亮島崎 晋亮 / Shinsuke Shimasaki

NPO法人信州アウトドアプロジェクト 代表理事
石川県金沢市出身。信州大学・大学院にて野外教育を学び、2007年8月にNPO法人信州アウトドアプロジェクトを設立。
行政・企業・学校・スポーツチーム等を対象に野外教育や自然体験活動を用いたプログラムを企画運営する。また、栄村をフィールドに、暮らしや教育、レジャーをテーマとした主催事業も展開。信州大学、国際自然環境アウトドア専門学校等の講師、栄村秋山郷観光協会の理事等も務める。

NPO法人 信州アウトドアプロジェクト(SOUP)

SOUP活動拠点の栄村にある小滝集落では、被災した古民家を再生するクラウドファウンディングに挑戦しています。(2015/04/30まで)

三枝 亮三枝 亮 / Ryo Saegusa

株式会社 ギンザのサヱグサ 代表取締役
1967年東京生まれ

子どもたちの上質なライフスタイルを提案するスペシャリティストアをディレクションする傍ら、都会に住む子どもたちを取り巻く環境の改善に重要性を感じ、昨年「SAYEGUSA GREEN PROJECT」を立上げる。

SAYEGUSA Green Magic in snow wonderland 2015

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夏のキャンプに続き、雪をテーマにしたキャンプ「SAYEGUSA Green Magic in snow wonderland」を春休みの期間を利用して行ないました。小学校低学年を中心に12名の子供たちが参加してくれました。

桜が咲いている東京から、まだたくさんの雪が残る長野県栄村「のよさの里」へ。

緊張気味だった子供たちも雪を見た瞬間、ソリを持って斜面を駆けのぼり、お友だちと勢いよく滑っていました。遊んでいる最中にカモシカに出会ったり、地元のとうちゃんとかまくらを作ったり、地元のかぁちゃんと郷土料理を一緒に作ったりと、大自然の中で遊ぶだけではなく、そこでの暮らしを学ぶなど、とても貴重な体験をすることができました。

サヱグサでは、GREEN活動の一環として、こうした自然体験活動を継続して実施してまいります。次回夏のキャンプは7月下旬に予定をしておりますので、是非ご参加ください(ご案内は5月中旬を予定しております)。

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