対談 Green Dialogue vol.3

Green Dialogueは、環境保全や環境教育などに取り組む、さまざまなスペシャリストに三枝亮(ギンザのサヱグサ代表)がお話を伺うコーナーです。
今回は、山梨県北杜市にある、パーマカルチャーデザイナーの四井真治さんのご自宅に訪問し、循環する暮らしについてお話を伺いました。


ソイルデザイン代表 四井真治さん
人を地球の仕組みに取り入れる 循環する暮らし

未来の子どもに伝えたい自然の知恵

―今回は、ご自宅の周りをご案内いただけるとのことで楽しみです。

せっかくだからお昼ごはんは、この外釜戸でご飯を炊きましょう。目の前に大きなクヌギの木がありますが薪(たきぎ)に使う木はもう少し細い方がいいのです。木を切ることに抵抗があったり、森には大木があった方がいいと思っている人が多いですが、木はある程度若い内に切って、森を若く更新している方が、木もそこに棲む生き物たちも活性化していいのです。老木が多くなったことは、最近流行っている立ち枯れの原因になっているという説もあるのですよ。

― 最近木を使わなくなってしまったせいで大きな木が増えてしまいましたからね。炭も地元のものを使っているのですか?

地元の炭職人さんが焼いたものを使っています。地元の木、地元の炭を使って買い支えれば、森を更新することになり、森を支えることになります。そういった暮らしのさまざまな選択と行いが、自然の仕組みに密着しているのですね。そしてこれは、文化の継承ということにもなります。持続可能な社会とは文化の継承を行うことが基本的なことだと思うのですが、日々のこういった小さな気遣いの積み重ねが本当の継承に繋がるのだと思います。

– 家の前の林の落ち葉なども釜戸の火付けに使うのでしょうか。

4_1そうですね。ほら、葉の表面にテカテカ光ったものがついていますよね。これはロウ分なのです。だから燃料にするとよく燃えるのですよ。これは「クチクラ層」といって、水を弾いたり乾燥から防いだりするために、葉から分泌しているものなのです。これも太陽のエネルギーが蓄えられて、二酸化炭素と水で作られているわけです。

― 自然が作りだした、よく燃える燃料を活用する。全く無駄がないですね。

これからの未来の暮らしは、無駄なく自然の仕組みの中で営んでいく方がいい。子供たちも、こういった中から知恵を育んで近代的なものに結びつけていくように教育すれば、地球の仕組みとリンクした社会を創っていってくれると思うのです。大人は、こういった暮らしの経験を持つ人が多いかもしれません。でも、今の子供たちは、それを本やテレビ、インターネットで知る事はあっても、実際の暮らしの中で体験できることが少ない。日々の暮らしの中の刺激は、どんな教育においても土台となるものです。


人が暮らせば環境が豊かになる

家の前にあるバイオジオフィルターをご案内しますね。

― 「バイオジオフィルター」とは何ですか?

家庭雑排水を浄水させる水路のことです。浄化装置で前処理をした後、排水をこのバイオジオフィルターに流すと、砂利に棲む微生物が有機物から無機物に分解してくれます。

そして、その無機物を水路に植えられたドクダミやセリ、空芯菜などの水辺の植物が吸収します。排水が浄化され、水が綺麗になると同時に植物を育てることができて、僕らの収穫にもなり循環するわけです。

子供たちも、暮らしの中のこういう仕組みを通して、汚いと思っていたものが実は他の生き物たちの住み処や糧となり得ること、そして地球を豊かにするものであることに気づくでしょう。正しく循環させれば、人が暮らせば暮らすほどに環境が豊かになっていくのです。

― これまでの環境教育は、人がなるべく環境に影響を与えないようにする、という教え方でしたね。

本質的なエコロジーというのは、自分たちの暮らしを、生き物の仕組み、地球の仕組みの中にどう取り入れるかを考え、人を含めた生態系を社会的に形成することなのです。

僕らが暮らすということは、食べるものや資源を集めてくること。それを循環させれば、住んでいる場所がますます豊かになっていくのです。

人が暮らすことは、環境に対して悪影響なのではなく、暮らすほどに多様性のある環境を生むことができるということですね。

このバイオジオフィルターも、水を綺麗にするという僕らの動機がきっかけになって、水辺の植物が育ったり、他の生物がたくさん棲める環境作りに繋がったりしています。下流の池までくると、メダカが棲めるくらいに水が綺麗になっているのですよ。この池ではメダカではなく、鯉を飼って食べようと思っていますが(笑)


肉体を暮らしている大地に返す

こちらは、私たちの生ごみやおしっこを入れている堆肥場です。

― まったく臭いがしませんね。

この堆肥場に棲む微生物は、落ち葉などの繊維分を分解してエネルギーを得て生きています。そして、子孫を増やすには、栄養素を多く含む生ごみやおしっこが必要なのです。落ち葉、おがくずなど、微生物にとってのエネルギーだけたくさんある状態にしておくと、微生物は栄養素について飢餓状態になります。そこに、生ごみやおしっこを入れると、臭い出す前に微生物は先を争うように分解してしまうのです。自然の中で臭うことが少ないのは、同様に程ほどに飢えている状態にあるからなのです。

― ご家族のおしっこを入れたこの堆肥を畑に撒いて、その畑で採れた作物をまた食べて、排泄したものをこの堆肥場に戻す。まさに循環していますね。

諸説ありますが、人間の体は5〜6年で全て入れ替わっていると言いますよね。骨や、古くなった細胞が排泄物と一緒に外に出て行く。おしっこを大地に返すと、他の生き物がそれを食べて循環していくわけです。

うちの長男は7歳です。この土地の畑で採れた野菜を食べて、堆肥におしっこを入れて、できた堆肥を畑に入れる生活を繰り返してきました。ですから、彼の肉体は一度この土地に返っているのです。

土地に返った自分の体が、野菜になったり、木の実になったりする。木の実は鳥が食べたりしています。自分の体を構成していたものが、自分が暮らす土地のいろんな生き物の体に変わっていく。暮らすことが同時に生き物を生かす豊かさになっているのです。子どもたちには、そういう自分が住んでいる土地への愛着と豊かさを感じられるようにしてあげたいです。


暮らしを小さな地球のように組み立てたい

― 一般的に普及しているエコロジーの概念が、いかに本質から離れているかが分かります。

今までのエコは、環境にインパクトを与えないような暮らしをしようと謳(うた)っていました。普及はしたものの、皆「エコ疲れ」していますよね。なぜなら、その方向が間違っていて、本当のエコロジーとしての結果が出ないからです。マイ箸、マイバック、エコカーなど、エネルギーを使う量や資源の量、二酸化炭素排出量といった、量が変わっただけで、原発や石油に依存している暮らし方自体は変わっていないですよね。

― 減らすとか使わないということは我慢につながってしまいますから、限界が来るでしょう。エコではない新しい言葉を考えてくださいよ!エコという言葉には、本質とは違う色が付いてしまっていますから。

実は、「エコロジー2.0」という新しいアプローチを考えているのです。せっかく興味をもって入り口まで来てくれた人がエコ疲れしてしまってはもったいない。興味を持ってくれた段階がVer.1.0だとすると、本当のエコを「2.0」としたいのです。

― いいですね!中には、環境教育のあり方として、田舎で暮らして、都会とは接点を持たなくていいという人もいますが、日本という国全体を考えればそれではいけないと思うのですがいかがでしょうか。経済も大事なのではないですか。

人が暮らすとその土地が豊かになる仕組みを作ることが可能であるように、経済だって、「みんながお金を使い活動することが、場を整え豊かにする」という仕組みにしていけばいいのです。そうすれば、我慢しなくても僕らが消費すればするほど、経済も環境も活性化し豊かになりますね。

資本主義の悪いところは嫌というほど分かりました。でも、それを否定するのではなくて、どう良くしていくかを考えることが先決。結局のところ、経済活動に乗せないと広がりませんから。

― もちろん、経済だけ回していてもダメな時代がやって来る。つまりは、どちらかに偏るのではなく、地球の仕組みに根ざした社会を創ったり、地域の文化を継承していくことが大事なのでしょう。都会と自然を結ぶことも、銀座の企業として果たす役割があるかもしれません。

持続可能な社会を創っていくのであれば、日本の特性を考えた方がいいですよね。日本では、東京を中心に東西に価値観や情報が広がって定着していく仕組みができあがっています。世の中を変えるなら、東京を起点にして新しい価値観を生み出した方が自然発生的な情報インフラに乗ると思います。

―今日は、四井さんのパーマカルチャーイズムが凝縮されたご自宅をご案内していただいて大変興味深かったです。
こういった暮らし方を、一軒単位、村単位、集落単位とますます広げていきたいですね。

暮らし全体を小さな地球のように組み立てていきたいと思っています。そういう家庭が増えれば、小さな地球がたくさんできていき、線として結びついて人間的なコミュニティもできる。それが面となって、全体が地球の仕組み、豊かさの仕組みに変わっていくことを願っています。

―日本でそういった変化がますます増えていくでしょうね。今日はありがとうございました。


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四井さん自作のロケットストーブ。友人が来た時に一緒に薪を拾い、お湯を沸かしてティータイムをするという。

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鶏には生ごみしか与えていないが毎日卵を産んでくれる。

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軒下は日本人にとってさまざまな作物を干す大切な場所。

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薪ボイラー。年間220日は晴れるので太陽熱温水器をメインに使い、雨の日のみボイラーを使っている。

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自宅周辺にはクヌギ、コナラ、シデ、山桜などの広葉樹林が広がる。

対談御礼と後記

まさに四井邸は環境を壊さずに人間が暮らす生活の見本だと感じました。
環境問題を考えるとき、自然を壊しているのは人間で、人間の存在そのものが悪だと言われることがあるようですが、四井さんの考え方や生活スタイルをもってすれば、人間は存在悪どころか地球環境の好循環を支える重要な主役になれるのかもしれません。四井さんとは久しぶりの再会でしたが、サヱグサグリーンプロジェクトの考え方や方向性を定めていくための大切なご意見番のお一人として、今後も末永くお付き合いさせていただければ幸いです。ありがとうございました。

四井 真治四井 真治 / Shinji Yotsui

ソイルデザイン代表

信州大学農学部森林科学科にて農学研究科修士課程修了後、緑化会社にて営業・研究職に従事。その後長野での農業経営、有機肥料会社勤務を経て2001年に独立。土壌管理コンサルタント、パーマカルチャーデザインを主業務としたソイルデザインを立ち上げ、愛知万博のガーデンのデザインや長崎県五島列島の限界集落再生プロジェクト等に携わる。

企業の技術顧問やNPO法人でのパーマカルチャー講師を務めながら、2007年に山梨県北杜市へ移住。八ヶ岳南麓の雑木林にあった一軒家を開墾・増改築し、“人が暮らすことでその場の自然環境・生態系がより豊かになる”パーマカルチャーデザインを自ら実践。日本文化の継承を取り入れた暮らしの仕組みを提案するパーマカルチャーデザイナーとして、国内外で活動。

三枝 亮三枝 亮 / Ryo Saegusa

株式会社 ギンザのサヱグサ 代表取締役
1967年東京生まれ

子どもたちの上質なライフスタイルを提案するスペシャリティストアをディレクションする傍ら、都会に住む子どもたちを取り巻く環境の改善に重要性を感じ、昨年「SAYEGUSA GREEN PROJECT」を立上げる。

銀座百点新連載「グリーン見ぃつけた」に企画編集協力

日本最古のタウン誌「銀座百点」で、銀座で取り組まれているグリーン活動を紹介する連載企画「グリーン見ぃつけた」が2014年1月号から始まりました。

このコーナーでは、ギンザのサヱグサ代表取締役の三枝亮が企画編集協力を行っており、連載第一回では寄稿もさせて頂いております。

CSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)のCを「Cityに置き換え、City Social Responsibility=地域の社会的責任とし、グリーンな取り組みを通して、銀座が世界からも注目されるようなサスティナブルな街へと発展していくことを願っています。

銀座百点